原麻里子 アナウンサー、社会人類学者、慶大講師、元テレビ朝日アナウンサー、元BBCワールドサービスプロデューサー、ケンブリッジ大学院論文修士 info@haramariko.com twitter id @haramariko
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ケンブリッジ大学 スーパービジョン

 ケンブリッジ大学とオックスフォード大学に特徴的なものとして、個人指導がある。これを、ケンブリッジではスーパービジョン、オックスフォードではチュートリアルと呼ぶ。

ケンブリッジ大学の社会人類学科の学部生は、各学期週平均2回ずつ、スーパービジョンを受ける。学生はスーパービジョンに備えて、1週間に2本ずつエッセイを書くことになる。最後の1学期、学生は試験勉強を兼ねて、より多くのエッセイを書く。スーパービジョンがあるので、学生は講義には出席しなくても、勉強をこなせる。スーパービジョンは、1回1時間が普通である。グループの学生の人数は、1人から4人など様々で、決まりはない。

 学生はスーパービジョンのためにエッセイを書き、スーパービジョンを受けながら試験に備えていく。学生は授業に出席してもよいし、図書館で調べて自分で勉強してもよい。英国では、大学での専門は何かと訊くときには、「あなたは、何を読みましたか?」と、read(読む)という単語が使用される。この言葉が示すように、学生は大量の本や論文を読むことを求められる。

 エッセイの問題は、スーパーバイザーがセミナーのシラバスに記されたスーパービジョン用の課題や過去の試験問題から適当なものを選ぶ。エッセイを書くことが期末試験のための勉強になっている。学生は与えられた質問に答えるエッセイを書く。その際に、シラバスに掲載されている本をなるべく用いることになっている。エッセイの長さは決まっていない。学生はエッセイをスーパービジョンの前日までに、スーパーバイザーにエッセイを提出しなければならない。

 ケンブリッジには学問書の品揃えの豊富な書店が多い。ケンブリッジの卒業後、私は気付いたのだが、ロンドンへ行くと、学問のポイントだけ書いた書物が多くある。ケンブリッジでも、リーダーと呼ばれるあるテーマに沿った論文や本の抜粋が掲載されているものは置いてあるが、あまり手軽に勉強できる本は売っていない。ロンドン大学SOASの教員に、「ロンドンには、かなりこうしたお手軽な本が多いですね」といったら、その教員は、「そう、私はいつも学生達がこういうジャンクを使うのではないかと怯えているのよ」と話していた。

 カレッジの学部生の勉強部屋を訪ねても、こうした簡単な本を使ってエッセイを書いたり、勉強をしたりする学生はいないようであった。日本のように、インターネットから適当に引用してエッセイの宿題を誤魔化す学生は、皆無とはいえないであろうが、いないようだ。

 スーパービジョンでは、学生はスーパーバイザーとエッセイについて議論をしなければならない。だから、学生がエッセイにいい加減なことを書いたりすると、スーパーバイザーに、言葉の定義を鋭く訊かれたり、内容についての厳しい質問がなされ、徹底的に絞られる。しかし、学生と教員の主張が異なるからといって、学生が自分の思考をきちんと弁護できれば、無理に考えを変えさせたりしない。

 西欧における伝統的教養である弁論・修辞学を習得しなければ、社会のエリートにはなれない。従って、学生達も適当にエッセイを書いて、これらのスキルを磨く機会を失ってはもったいない。こうした教育を今でも個人指導で行っているのは、オックスブリッジだけであるから、選ばれたものだけが受けられるエリート教育ともいえよう。 (続く)

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    (社会人類学科のパーティーで)

無断転載を禁じます。 原 麻里子

by anthropologist | 2007-07-14 11:20 | ケンブリッジ大学
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