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マルコフ(BBCプロデューサー)毒殺事件2「ゲオルギー・マルコフ殺害事件ーブルガリア前共産党政権批判勢力のシンボル」については先日のブログに論文「BBCワールド・サービス」(『ソフィア』)からの抜粋を掲載したが、これは論文に掲載出来なかった部分である。 ブッシュハウス(BBCワールド・サービス)では東側の反体制派の知識人は数多く働いていたが、その中では、ブルガリア語放送で働いていたジョージ(ゲオルギー)・マルコフ(Georgi Markov)が最も有名であろう。 マルコフはブルガリアにいた頃は著名な劇作家・小説家であったが、1969年に西側に亡命し、ロンドンに移ってからは、BBCワールド・サービスのブルガリア語放送のみならず、自由ヨーロッパやドイツの放送局のために働いていた。これらの放送の中で、彼はブルガリアの共産党政権を強く批判していた マルコフは、特に、当時の指導者であるトドロフ・ジフコフ共産党書記長 の政治を独裁的だと厳しく批判し、マルコフの放送はブルガリアにおける反体制派の活動を鼓舞するものとみなされていた。1970年代に、ジフコフ書記長は閣議会でマルコフのラジオ報道を黙らせたいと語ったといわれる。 1978年9月7日、マルコフはロンドンのウォータールー・ブリッジのバス停でバスを待っているとき、傘に仕込まれていたリチンを体内に打ち込まれ死亡した。49歳であった。マルコフは、傘が脚に触れたとき、突然、右脚の後ろに激痛が走ったが、オフィスへ夜勤に出かけたという。 その前に、マルコフに匿名の電話があり、マルコフに毒を盛ると言われていた。そのため、彼は飲食は親しい友人と一緒の時にしかしなかった。しかし、マルコフは傘が身体にぶつかるといったような些細な偶然には、ほとんど気を使わず、そのまま仕事をして帰宅した。翌日夜までに、マルコフは高熱を出し、3日後に亡くなった。 1989年、私はワールドサービスで働いていた経験を持つ英国人の妻アナベルを訪ねた。ロンドン南部のクラッパムのミドルクラスの住宅街にマルコフ夫人であるアナベルは住んでいた。二人が出会ったのはBBCで二人の間には娘のサーシャがいた。 マルコフ夫人によると、事件の翌日、職場から戻ったマルコフは、いつもどおり、家族3人で夕食をとった。しかし、食事中、マルコフは気分が悪くなったといって席を立とうとしたが、その場に倒れてしまった。彼は高熱が続き容態は良くならなかったので、翌日、妻はマルコフを病院へ連れて行った。マルコフは急性敗血症と診断され、治療を受けたたものの、病状は好転しなかった。熱は下がらず、血圧は低下、白血球は著しく増加。医師たちには、彼の症状は原因不明であった。自然死に見えたという。 その後、マルコフ婦人に紹介され、マルコフが薬を体内に注射されて出勤したときに、最初にオフィスでマルコフに会ったテオ・リュコフにインタビューした。二人の家は徒歩で3分位の距離にあり、日頃から、きわめて親しい関係であった。リュコフによると、マルコフは出勤したとき、脚が痛いといっていたという。そして、その事件を記した小さく折りたたんだ赤茶けた新聞記事の切抜きを見せてくれた。(リュコフはブルガリアから亡命してきた人々にとっては、シンボル的存在であり、また、いつか、彼のことについてブログに掲載する。) 彼の死について調査した病理学者はリチンはすぐに消えてなくなり、病院で調べたときは、リチンによる死は自然死に見えるという。何週間も調査したあと、検視官はマルコフは「非合法的に殺害された」と結論付けた。これはKGBとブルガリアの秘密警察の仕業であると広く信じられてきたが、犯人はだれか分っていなかった。 マルコフの死と前後して、ブルガリア国営放送の元ラジオ編集者ウラディミール・コストフ氏がパリの地下鉄から出てきたところ、同様のリチン弾丸を発射された。しかし、彼は厚手のウールのカーディガンを着ていたお陰で、毒は彼の皮膚に深く入ることはなく、彼は生き延びた。 1989年に、ブルガリアで共産党政権が倒れた後、大量の改造した傘が内務省で発見された。 無断転載を禁じます。 原 麻里子 #
by anthropologist
| 2007-07-24 10:13
| BBC
ケンブリッジ大学ー講義中の学生たち社会人類学科では、講義中、教員は文献を引用する際には、ここが引用部分であると明確に示す。例えば、[Smith 2002: 48]というように読み上げる。そして、教員によっては、引用文を語るときは、両手を挙げて、人差指と中指を振って、引用文を明確に示していた。学生達は手元にあるリーディングリストを見れば、Smithが 2002年に書いた本か論文の 48ページから引用された文とわかる。予め用意してきたペーパーを読み上げるというような授業をする教員もいた。 授業を受ける英国人の学生たちは講義内容を完結したセンテンスでノートに書く。日本では、小学生の時に、授業内容を文章でノートを取るのはよくないと習う。ノートを簡潔に上手くまとめるのが頭のよい証拠とされていたが、それとは全く異なる。 英国の大学教育に関しては、エッセイ、スーパービジョン、プレゼンテーションのみならず、こうした授業のやり方、学生達のノートの取り方からも、教育のあり方の一端がわかる。 試験の話は別記したが、英国では学生たちはエッセイやセミナールで自分なりのエッセイやペーパーを書くので、講義ノートを丸暗記して、テストを受けるということにはならない。また、それでは、評価が低くなる。 ところで、9時から始まる1時間目の講義中、私は女子学生がリンゴを齧りながらノートを取っている姿を時々見かけた。社会人類学の2年次以降の授業は、ほぼ全てがセミナールームで行われるが、その部屋は机を置くと、窓辺に座ったりしても、50人位しか座れない。そこでのことである。英国の自由な気風が感じられる。 私は社会人類学のような文化相対主義的な考え方をする学科だから、古い規範から外れた行動をとる学生も寛容に受け入れられたのかもしれないと思い、他の学部に留学していた人たちにも訊いてみたが、同様なようであった。ただ、古典学を学んだ友人は、講義中にリンゴを齧りながら講義を聴いている学生を見たことはないと云っていた。英国では歴史的に理想的道徳的人間の育成に欠かせないとされてきた古典学を勉強する学生たちだけのことはあるのかもしれない。 とにかく、授業中、内職や私語をする学生は皆無であった。また、エスケープする学生もいない。勿論、日本のように、授業中、化粧をしている女子学生は皆無。教員が学生の出席を取ることは全くなかった。 無断転載を禁じます。 原 麻里子 #
by anthropologist
| 2007-07-23 15:29
| ケンブリッジ大学
ケンブリッジ大学の教育 セミナー
ケンブリッジ大学の文化系の学部では、午前中に講義が行われ、午後にセミナーやスーパービジョンが行われる。昼食後、学生たちはセミナーに出席したりスーパービジョンを受けたりする。
英国の大学では学生たちは1年次から専門科目を本格的に勉強することになっている。英国では学問は方法を学ぶことであって、知識を集めることではないとされているので、数少ないことを深く学ぶ。そして、学生に問題の発見と解決、論理的に論評する力を養成することを目的にしている。その際、特に重要な役割を果たすのが、セミナーとスーパービジョンとエッセイを書くという能動的な学問である。 ここでは、M,Philのセミナーの例を挙げよう。まず、最初の時間に学生たちにプレゼンテーションの担当が割り振られる。学生たちはセミナーのシラバスに書かれている問題の中から、各自がなるべく興味のあるものを1問選ぶ。 学生は与えられた質問について調べ、解答を用意する。重要なことは、各自が何かについてまとめるというのではなく、質問に対して答えるという形で文章にし、それを読み上げる形で発表を行う。自分の考えを文章にまとめることによって、言葉の定義から文の構成といった論理・修辞の訓練、そして、発表者のその問題に対する態度を明らかにすることにもなる。従って、日本のようなグループ発表はなく、すべてが個人発表である。 無断転載を禁じます。 原 麻里子 #
by anthropologist
| 2007-07-22 11:13
| ケンブリッジ大学
Cambride ExpressCambride Express に、ケンブリッジ在住30年の写真家志村博さんの写真が掲載されています。ケンブリッジ大学の写真も沢山あります! http://diary.jp.aol.com/ffzuhxwpubbf/ #
by anthropologist
| 2007-07-20 11:01
| ケンブリッジ大学
BBC時代の元同僚 毎日放送伊東正治元アナ(BBC ワールド・サービス 日本語部の部屋で) インターネットをサーフィンしていたら、私と同時期に、大阪の毎日放送からBBCワールド・サービスに派遣されていた 元アナウンサー伊東正治さんの英国に関するブログ「やっぱりイギリスが好き!英国想い出スケッチ」にBBCのことを書いていらっしゃることを発見しました。伊東正治さんは、今は、ラジオ局編成部長だそうです。 http://www.mbs.jp/announcer/meikan/ana_9/200107.html #
by anthropologist
| 2007-07-20 08:16
| BBC
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