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英語のアクセント
―海外では、話し相手の発音やイントネーションが違うだけで「分かろうともしない、聞こうともしない」人々を沢山見てきましたが、日本では、日本語の出来ない私が何か伝えようとしても、皆さん一生懸命「分かろう」としてくれます。―
これは、『文藝春秋』(2006年9月号)に掲載された『ゴーン家の「夫操縦法」教えます』での リタ・ゴーン(カルロス・ゴーン夫人)とリシャール・コラス(シャネル社長)の対談にでてくる、ゴーン夫人の言葉です。(p176) 正に、英国では人はその人の話す英語を聞いて、話を聞くか交渉がまとまるかが決まるというほどです。勿論、日本の大企業の看板を下げている人はどんな英語を話しても、商売ならば、交渉はまとまるかもしれませんが、これはお金の力です。 この点を理解しないと、特に、英国では交渉において非常に厳しいことがあります。日本人に交渉を代理してもらうときは、その人の英語のアクセントや発音や文法通り話すかなどに気をつけないといけません。 英国の学校では、長年、アクセントのおかしな児童・生徒を笑いものにし、その子達に恥ずかしい思いをさせて、アクセントを直してきました。今では、そのやり方は子供の心を傷つけるといわれ、正式の学校教育では用いられていませんが、英国人の心の中には、まだまだ、アクセントを笑いものにする習慣が強く残っています。ですから、留学中、私は労働者階級出身の英国人学生の声をほとんど聞いたことがありません!また、電話をかけてきた人の英語のアクセントが可笑しいと、電話を取り次ぐ人の中には電話口で聞こえよがしに、その「奇妙な」アクセントを真似して物笑いの種にしたりする人もいます。そこまで、酷く無くても、電話をかけてきた人を「この人は変なアクセントがありますね」といって、電話を取り次ぐことはよくあります。こんな状況で、「奇妙な」アクセントで英語を話す人が交渉して、自分たちに有利なように交渉がまとまるでしょうか? 21世紀になって出された英国の社会学の論文でも、学部で英文学、大学院では英語教育を学んで成績優秀(ファースト)で卒業した労働者階級の女性小学校教員が、他の教員たち(複数)に、「そんなアクセント(労働者階級のアクセント)で、よく、英語を教えられるな・・」といわれるという話が出てきます。 英語はアクセントなんて関係ないという人もいますが、そういう人は本当の英国文化を理解していないような気がします。日本では他人の話す日本語を聞いて、「訛っている」と笑いものにすると、笑いものにした人の品性が問われますが、英国では異なります。ですから、「英語は出来ません」という人に英語の仕事は頼まないことです。「英語は出来ません」という人は英語に厳しい文化を知っているのです。 無断転載を禁じます。 原 麻里子
by anthropologist
| 2007-09-09 18:18
| 英国
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